DESC法を使ってみたけど、上手くいかない・・・。
そんな方に向けて、今回からDESC法のコツをご紹介したいと思います。
「DESC法って何?」という方は、こちらの記事をご参照ください。
まず結論から言うと、一番のポイントは
「DESC方の手順に従うこと」です。
その気は無くても、感情的になっていると、DESC法の本来の手順とは違うことをしてしまうことがあります。
そうなると効果は半減、もしくは逆効果ということもありますので、ご留意ください。
以上は大前提としまして、これから4回に分かって各ステップでのコツをご紹介してまいります。
交渉術、心理学、レトリックなどのテクニックも取り入れていますので、是非ご参考いただければと思います。
それでは今回は最初のステップである「Describe(描写する)」での、コツをご紹介していきたいと思います。
客観的事実ではないことを混ぜない
これは本当にやってしまいがちなのですが、
感情的になっているとついつい客観的事実の中に、自身の主観的感情を含めてしまうことがあります。
例えば自分ばかりがティッシュの交換をしていると感じているときに、
「昨日ティッシュが切れていたから私が替えたんだけどさ」は、
事実かと思いますが、
「いっつも私がティッシュを交換してるんだけどさ」、
というと、それは客観的事実ではない可能性があります。
「いっつも」の部分が、例えば10回中9回はあなたがやっているのだとしても、
1回は相手がやっているのであれば、「いっつも」とは言えません。
別の例として、洗濯機が古くて音がうるさいので買い換えたいと思っているときに、
「この洗濯機は買ってもう15年経つけどさ」は事実と思いますが、
「洗濯機が古くて音がうるさいんだけどさ」だと、
客観的事実ではない可能性があります。
あなたにとって「音がうるさい」と感じていても、
相手がそう感じていなければ客観的事実としては受け取られません。
上記の2つの例で入れた「いっつも」とか「音がうるさい」というのは、
次のステップであるExpress(表現する)で伝えるべき内容です。
DESC法を効果的に使用するためには、
始めにDescribe(描写する)で確実な客観的事実を伝え、
相手から早いタイミングでYESを引き出しておく必要があります。
逆にここで相手に反論されると、この時点で交渉決裂に陥って、
自分の主張が伝えられないこともありますので、ご留意ください。
(自分の主張のために)不要な客観的事実は入れない
これも当たり前に聞こえますが、意外とやってしまいがちです。
真面目な方は、まずは「ファクト(事実)を並べよう」といって、何でもかんでも起きたことをつらつらと言ってしまうことがありますが、その必要はありません。
始めから意図を持ってゴールを見定め、そこに向かうのに有効な客観的事実のみを選択し、相手がNOと言わない状態で土台を作りながら、着実にあなたのゴールに向かって土台を作っていくことが出来るのです。
Describe(表現する)のステップで、主観的意見を入れることは最もやってはいけないことだと私は考えています。
しかしそもそも「客観的事実」と「主観的意見」は明確に分けることは出来ません。
どういうことかと言いますと、
本来「客観的事実」は無数にありますが、その中から意図を持って事実を取捨選択することで、
あなたの意見が反映されているのです。
例えば、以下の3つの文(発言)を見てみてください。
①彼は学生だ
②彼は東大の学生だ
③彼はかっこよくて、さらに東大の学生だ
この中で客観的事実といえるものはどれでしょうか?
①②は客観的事実に見えますが、③はどうでしょうか。
「かっこよくて」の部分が意見にあたりそうですので、客観的事実と言えば①②となりますね。
では逆に意見といえるものはどれでしょうか?
先ほど見たとおり③は意見といえそうですが、①②はどうでしょうか?
まず②から見ると「彼は”東大の”学生だ」と、わざわざ「東大」が入っていることが分かります。
ここに発言者の何らかの意見が含まれている可能性が高いです。
東大と言えば日本で一番偏差値の高い難関大学ですから、
「彼は東大の学生だ」と言えば「彼は頭が良い」という主張をしている可能性が一般には高いでしょう。
では「①彼は学生だ」はどうでしょう。
これは明らかに客観的事実のみで、意見ではなように見えますが、果たして本当にそう言い切れるでしょうか?
例えば「(芸能事務所などで)彼に深夜のラジオパーソナリティを任せたいと思うがどうかね?」と聞かれていたとして、
「彼は学生だ(だからそんな仕事は出来ない)」と言っているのであれば、
この発言には()の中で示した意見が含まれているといえないでしょうか。
では何らかの文脈の中ではなく、人に紹介するときの第一声で「彼は学生だ」と言ったとしたらどうでしょう。
実はこの場合も意見が含まれてしまいます。
なぜならば、「彼」を紹介するための要素は無数にあるにもか関わらず、その中から「学生だ」という要素を抜き出しているためです。
「彼は日本人だ」「彼はバスケットをしている」「彼は一人暮らしだ」など様々な事実の中から、「彼は学生だ」を選んでいることで、相手に伝えたい何らかの意見が反映されているということになります。
このように客観的事実を述べているだけであっても、主観的意見と切り離すことは出来ないといえるのです。
少し長くなりましたが、このような話が好きな方は香西秀信先生の「論より詭弁」を是非ご一読ください。(めちゃくちゃ面白いです)
DESC法の話に戻ります。
この通り、
DESC法のDescribe(描写する)の手順を踏む体を取りながら、
客観的事実の取捨選択によってあなたの主観的意見を反映させ、
交渉を有利に進めることが出来るようになります。
出来ている人からすると「当たり前じゃん」という内容かも知れませんが、
「そもそも客観的事実と意見は分けられない」ということは、新たな発見だったのではないでしょうか?
それでは本日は以上となります。
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