前回に引き続きDESC法のコツをご紹介したいと思います。
「DESC法って何?」という方は、こちらの記事をご参照ください。
それでは今回は2つめののステップである「Express(表現する)」での、
コツをご紹介していきたいと思います。
「自分がそう感じる」ことは事実として堂々と伝える
DESC法に限らずですが、交渉全般において言えることとして、
建築と同じように安全な土台や足場を作りながら、
徐々に高所の作業をしていくようなイメージで進めることが大切です。
最初のDは客観的事実ですので、建物で言うと基礎・土台の工事のようなものです。
ここは絶対に揺るがないように、前回の記事で述べた通り、最も強固と言える客観的事実以外の不純物を混ぜ込まないように注意しましょう。
そして今回のEは自身の主観的感情になりますので、危険度は少し増します。
建物で言うと、足場つくり、のようなものですね。
ここも安全に交渉を進めるために、しっかりと構築していきたい部分です。
Eにおいてこちら側における最も強い点は「自分がそう思ったことは事実である」ということです。
相手も同じことを思うかどうかは別として、こちらがそう思っていることは事実なので、それ自体を相手が否定できるものではありません。
ですから、例え反論されたとしても、自分の感情を相手にしっかり伝えるように意識してください。
例えばティッシュが切れたら交換してほしい、と伝えたい場合は、
まずDとして、昨日も一昨日も自分が交換をしているという客観的事実を伝えた上で、
「不公平な気がして、ちょっと嫌なんだよね」とか、
「私ばかりがやっている気がするんだよね」
などと伝えます。
仮に相手が「大した作業じゃないでしょ?」とか「いや、こっちだって替えてるときはある」、などの反論があったとしても、
あなたの感情自体は事実に違いはありませんので、
「それは分かるけど、でも実際そう思っちゃうから、2人で考えたい」「不公平な感じは消えないから、この違和感を解消したい」など、
怯まずに堂々と自分の意見を相手に一旦理解してもらえるまで、続けましょう。
相手が納得してくれればベストですが、あなたの感情の共通理解化まで進められれば、Eのステップでの足場作りは完成となるでしょう。
ここまでいけば、あなた1人の問題から、2人の問題になりますので、交渉もの目的は半分達成できていると言えるでしょう。
相手を責めすぎない
自分の感情は堂々と主張する一方で、相手のことを責めすぎないように留意してください。
人類は原始時代の心をそのまま持っていると言われており、当時は「社会から拒絶される=死」を意味していたため、他人から非難されることを極端に恐れるようになっています。
そのため強く非難をしてしまうと、相手の心に大きなダメージを負わせてしまいます。
DESC法による交渉の目的は、相手にダメージを負わせることではありませんので、その点は留意しましょう。
またそれは相手がどんなに悪かった(とあなたが思った)としても、同じです。
自己啓発書の名著であるデール・カーネギーの「人を動かす」の一節には、
「極悪非道な犯罪者でさえ自分のことを悪いとは思っていない」という衝撃の事実が述べられています。
犯罪者でさえ自分のことを悪いとは思っていないのですから、ましてや善良な市民と思われるあなたのパートナーは、自分のことが悪いだなんて全く考えていないのです
そのため相手の悪かった点を責めたとしても、相手は反省するどころか、むしろ反発をしてくるでしょう。
そういった人間心理を踏まえながら、適度な圧力で交渉を進めるようにしましょう。
なお「人を動かす」は他にも人間心理の深い洞察を得られますので、オススメです。
相手に考えさせる
Expressでは自分の主観的感情を伝えますが、相手が納得をしてくれるかどうかは別問題です。
私としては相手が納得するかどうかは相手側の問題なのでその状態で次のステップに行っても良い、と考えていますが、
相手の納得感が得られていないと次のステップに進みづらいという方もいらっしゃるでしょう。
そこで相手の納得感を引き出す裏技をご紹介します。
その裏技とは、相手に考えさせる、です。
相手は自分で考えたことなので、納得しないことはありえません。
しかもこちらが考える必要もないので、有効性と効率性を兼ね備えた一石二鳥の策といえます。
でもそんな都合のいいやり方は本当にあるのでしようか?
…それが次のマジックワードを相手に
投げかけることで実現できます。
それが
「こっちの身になって考えてほしい」
です。
このフレーズは月並みな言葉に見えますが、
相手の心の深い部分に突き刺さります。
想像してみて下さい。
あなたの奥様もしくは旦那様から、
何かを訴えかける目で「こっちの身になって考えてほしい」と言われたら、
ざわざわと胸が騒ぎ、
自分は何かかなり良くないことをしているのではないか、と
自分に矢印を向けることになりませんか?
相手にどんな想いをさせてしまっていたのか、自分は全くそれに気がついていなかったのか、もしくは気がついていながら見知らぬふりをしていたのか、「そう言えばあの時も…」
などなど、さまざまな想いが頭を駆け巡りませんか?
このように、相手の内面にかなり侵食していくのがこのフレーズです。
言われた直後は人によっては反発の感情が芽生えるかもしれませんが、
この言葉が心に引っかかりつづけ、
自然と内省が促される、という仕組みです。
この方法は心理学者 内藤誼人さんの書かれた「『人たらし』のブラック心理術」という本で紹介されていました。(「ブラック交渉術」、もしくは「ブラック謝罪術」だったかも・・・。全部面白かったのでリンクを貼っておきます!)
乱発すると相手は「またこれか」となって効果は薄まりますので、ここぞという時にお試しいただきたい裏技でした。
それでは本日は以上となります。
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