今回は「3歳からのアドラー式子育て術『パセージ』」の書評です。
この本をひと言であらわすと
「親も子どもも自立をするためのシンプルな子育て方針書」
です。
子育てには悩みがつきものです。
何らかの対処をする際に、判断に迷われることも多いと思います。
本書を読むことで、そんな悩ましい子育てに対して、
拠り所となるシンプルな考え方を学ぶことが出来ます。
分かりやすい方針があると心が軽くなります
こんな人におすすめ
こんな人におすすめです。
子育てに悩んでいる人
子どもに怒ってしまう人
「アドラー式」について
本書はタイトルに「アドラー式」とあるように「アドラー心理学」の考えをベースとした子育て術(=パセージ)について書かれたものです。
アドラー心理学とは、精神科医・アルフレッド・アドラーの考えをもとに発展した心理学です。
アドラーは「世界によい未来をもたらす子どもを育てること」を考え続け、そのための理論や療法を始めました。
パセージは対等な人間関係を築き、課題を解決できる「自立した人間」になることを目指しています。
アドラー心理学では人間社会を極めてシンプルにとらえています。
詳しくは関連図書をご参照ください。
この本の概要
この本の概要をご説明します。
パセージの最大の特徴として、子育てで目指すべきシンプルな目標が明記されいていること、が挙げられます。
パセージでは「能力」には2種類あると考えています。
それは「自己管理の能力」「貢献する能力」です。
それらを「心理面」と「行動面」のそれぞれに分けることで、以下4つの目標がつくられます。
心理面 | 行動面 | |
自己管理の能力 | 私は能力がある | 人々は私の仲間だ |
貢献する能力 | 自立する | 社会と調和して暮らせる |
またパセージでは信念が行動を作る、という考えがあるので、
「心理面」の目標は「行動面」の目標より先に達成される必要がある、と考えます。
子育てに困った時にはこの目標を思い出し、子どもがこの4つの目標に向かうだろうか、
といつも考えることで、道に迷うことがなくなります。
この4つの目標に向かって援助することを、「勇気づけ」といいます。
つまりパセージにおける子育てとは、親が子どもに「勇気づけ」をすること、
とまとめることが出来ます。
「勇気づけ」の反対のものは「勇気くじき」といいます。
例えば「罰を与えること」「褒美を与えること」による子育てでは、4つの目標に向かわず、
むしろ目標から遠ざける「勇気くじき」となってしまっているため、
他の方法に工夫する必要があると分かります。
自身の子どもへの対応が「勇気づけ」になっているか、それとも「勇気くじき」になってしまっていないかを、
先の4つの目標に照らして考えることが重要です。
・・・と言ってもいきなり実践することも難しいでしょう。
そこで本書では、よくあるシーン例を用いながら、どういった行動を取れば、
「勇気くじき」ではなく「勇気づけ」ができるようになるのか、を示してくれています。
目標はたったの4つ!
私が胸に刻んだポイント
この本を読んで、私が特に良いなと思った箇所を抜粋してご紹介します。
勇気とは○○○である
まずは勇気についてです。
「勇気」とは「みんなのことを考えて、したくても、してはいけないことはしないし、したくなくても、しなければならないことはする」という心に付けた名前です。
3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」 P72
一般的に「勇気」と聞くと、
バンジージャンプが出来るとか、
お化け屋敷が怖くないとか、
謎の液体を飲める、
などが思い当たりますが、
パセージでの定義は全く異なります。
パセージでは「『みんなのことを考えて、したくても、してはいけないことはしないし、したくなくても、しなければならないことはする』という心に付けた名前」と定義されます。
これは行動面の貢献する能力「社会と調和して暮らせる」ために、
持っておく必要のある「信念」と言えます。
この定義に従えば、
(誰もやりたくない)トイレ掃除をみんなのためにやるとか、
(本当は食べたいけど)みんなのためにお菓子を全部食べないとか、
といったことも「勇気」と言えます。
パセージとは結局、上記のような行動を子どもが自ら選択するように援助する、
ということに他なりません。
マイナス感情で勇気づけをしても意味がない
せっかく勇気づけようとしたのですが、言葉かけだけを変えても、マイナス感情があると子どもを勇気づけることができないのです。
3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」 P52
子供は親のマイナス感情をすぐに見抜きます。
例えば子どもが約束の時間になってもなかなか寝ようとしないとき、
すっごくイライラしてるけど、勇気づけが必要だからといって、
「(本当は怒りたいけど我慢しながら)どうしたら寝られるか一緒に考えてみよう」
などと言っても、子どもはすぐに親の感情を見抜きますので、
「あ~皮肉を言われてるなぁ」となり、勇気づけになりません。
一度クールダウンし、マイナス感情を押さえてからではないと勇気づけは出来ないのです。
クールダウンの方法として、一度その場所を離れてみるとか、
子どもの不適切な行動の<よかったところを探してみる>などがあります。
子どもがなかなか寝ないのは、興味関心があることに夢中で、
自分の才能を伸ばしている最中かもしれません。
このように負の面だけではなく、正の面に着目する、
ということもパセージでは重要な考えとなります。
子どもの課題を親が先回りして片づけない
親はついつい先回りして、子どもの課題に悔いを出したくなるものですが、それでは子どもが自分の問題を自分で解決できるようになりません。
3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」 P89
子どもには自らの体験による「自然の結末」によって学ぶ機会があたえられています。
親がそれを奪ってはいけません。
そのために、子どもが失敗するとわかっていても、あえて手を出さずに見守る必要があります。
親が先回りをして手出しをすると、
「自分は信頼されていない」
「自分には能力がない」
と思い、4つの目標から遠ざかる(=勇気くじき)となってしまいます。
アドラー心理学には「課題の分離」という考えがあり、
そのことによる最終的な影響が誰に降りかかるのか、を見極め、
それが自分ではないのであれば、課題を手放す(分離する)というものがあります。
それは親子であっても同じです。
ただし、以下の場合には親子の<共同の課題>として、親が手伝うことができます。
1は明確ですが、2と3に該当するかの判断は少し難しいと思います。
これは日々親も成長しながら、見極める力を養う必要があると思います。
別の子育ての本にも、
「親の役目は子どもに上手に怪我をさせること。」
とあり、子育ての極意を端的にわかりやすく表現したいい言葉だと思いました。
やってしまいがちなことが、「勇気くじき」になっていることも…
関連書籍
最後に、同書の関連書籍を簡単にご紹介します。
もしアドラーが上司だったら
パセージのベースとなるアドラー心理学をもう少し学びたい方向けの関連書籍です。
もしアドラーが上司だったら、というタイトル通りの設定で、
物語形式でアドラー心理学が学べます。
舞台は会社組織ですが、部下への育成などは子育てにも大いに通じるところがあります。
私はこの本で、「人間社会は極めてシンプルであり、複雑に感じるならば、複雑にしているのはあなた自身だ」という考えに大いに感銘を受けました。
嫌われる勇気
こちらもアドラー心理学を学べる本です。
非常に有名な本で、ベストセラーになっています。
「この世の悩みはすべて人間関係である」とか「コンプレックスなど存在しない」といった、斬新な考え方が学べます。
パセージにもある「課題の分離」についても理解が深められると思います。
3~6歳までの実践版 モンテッソーリ教育で自信とやる気を伸ばす!
こちらは子育ての本です。
GAFAMの経営者たちや、日本では将棋界の藤井 聡太さんがこの教育法で育てられたと言われており、
発達段階に応じた具体的な子育ての方法が学べます。
親がなんでも間でも先回りしてはいけない、などパセージに通じるところも大いにあります。
こちらは3~6歳向けです。
0~3歳向け、もあります。
まとめ
「3歳からのアドラー式子育て術『パセージ』」の書評でした。
パセージでは子育ての目標は以下の4つとなり、それに向かわせるための援助を「勇気づけ」とよびます。
心理面 | 行動面 | |
自己管理の能力 | 私は能力がある | 人々は私の仲間だ |
貢献する能力 | 自立する | 社会と調和して暮らせる |
本書はコンパクトにまとめられていますので、サクッとお読みいただくことが出来ます。
それでは以上となります。
最後までお読みいただきありがとうございました^^
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